東日本大震災に際しての地震と津波の影響によって、炉心溶融という大惨事につながった福島第一原発事故は記憶に新しいところですが、こうした教訓を踏まえて、全国の原子力発電所が立地している自治体や、その周辺の自治体では、いざというときのための地域防災計画を定めています。
地域防災計画そのものは、災害対策基本法とよばれる法律にもとづき、その地域で発生することが見込まれる風水害などの災害に備えて、あらかじめ情報収集や警報の発令、避難誘導、災害応急対策などといったことがらを定めておくものであり、一般の自治体でも策定が進んでいます。
しかし、原子力災害対策特別措置法とよばれる別の法律には、災害対策基本法の読み替え規定が設けられており、原子力発電所がその区域内に立地しているか、あるいは周辺に存在している市町村では、地域防災計画のなかに原子力災害対策編という、特別なセクションが設けられることになっているのです。
原子力発電所において、もしも重大な事故や事象が発生した場合には、発電所からの距離と、事故や事象の重大さに応じて、適切な避難や屋内退避などの措置が講じられることになっています。
一般に、原子力発電所から5キロメートル以内の範囲であれば、たとえば震度6以上の地震が発生するなどの警戒事態の段階で、早くも入院患者などの要配慮者の避難準備が開始されることになります。
発電所内で全交流電源が喪失するといった、原子力災害対策特別措置法の第10条に規定する事項、いわゆる10条事象が発生した段階になると、5キロメートル圏内の要配慮者の実際の避難などがはじまるとともに、その他の住民の避難準備も着手されます。
つづいていわゆる15条事象、たとえば原子力発電所で冷却機能喪失といった事態に陥った場合には、5キロメートル圏内の一般住民の避難とヨウ素剤の服用が実際に開始され、30キロメートル圏内の住民には屋内退避が勧告されるなど、地域防災計画にもとづく段階的な措置が講じられることになります。
最終更新日 2025年4月16日 by dksyla